2006年07月14日

原子力は必要?

6月23日の日記に書いたとおり、「原子力立国計画」への意見募集が6月21日から始まっています。だけど、文字がぎっしりで専門用語がいっぱいの154ページもの計画案を判読して意見を送るなんて一般の人にはできないので、この計画案のよりどころとなっている「何故原子力が必要なのか」という箇所のみ読んで、意見を送ることにしました。
もしも、僕と同じように日本を「原子力立国」にするために莫大な費用と時間をかけて原子力政策を進めてほしくないと思っている人がいたら、以下を参考にして総合資源エネルギー調査会へ意見を送ってください。意見の受付締切日は7月20日です。。

その箇所は、「 第2部 原子力を巡る時代環境」の「第1章.何故原子力が必要なのか」という部分です。まとめると、その理由は以下の3つ。。

1.日本の総発電量の約3分の1を占めている
2.準国産エネルギーである
3.発電の過程でCO2を排出せず温暖化対策に貢献する

一つ一つ解説していきます。
まず一つ目ですが、これにはカラクリがあります。
原発は出力の調整が難しく、電気の需要が多いときにはいっぱい発電して、少ないときにはちょっと発電するということができません。
一方、火力発電は出力の調整ができるので、必要なときに必要なだけ発電することができます。
だから、日本では電気の需要の波の、もっとも需要が少ないところよりも下の部分を、原子力を常に最大に近い出力で稼働させて発電し、それよりも上の部分を、火力を需要の変化に合わせて必要なだけ稼働させて発電しているのです。
つまり、原発が3分の1を占めているのは、原発がそのような使い方しかできないから、そのように使っているというだけで、原発を止めたら日本の電力が3分の2になるというわけではないのです。

次に二つ目ですが、これはウソです。
そもそも「準国産」って?って思う方もいると思うので簡単に説明します。
原発の燃料に使われれるウランは外国から輸入しているので国産ではありません。しかし、原発の使用済み核燃料から核分裂しないウランを取り出してプルトニウム変える「高速増殖炉」が実用化すれば、そのプルトニウムを燃料として使えるようになり、国産の資源と同等に扱われます。
しかし、高速増殖炉は実験の段階で事故を起こし、現在は停止しています。つまり、現時点ではまだ「準国産」ではないのです。
しかも、この計画案では2050年よりも前に商用炉を開発するとしているので、仮に開発が順調に進んでそのとおりになったとしても、「準国産」になるのは今から40年以上も先のことです。

そして三つ目ですが、これはビミョーです。
発電の過程でCO2を排出しないというのは事実ですが、温暖化対策に貢献するというのは、事実ではない可能性があるのです。
まず、国や電力会社がその根拠として用いている下記のグラフ「各種電源のライフサイクルCO2排出量(メタンを含む)」(「原子力立国計画(案)」に掲載されている同名のグラフを元に作成)が、現在はまだ実用化していないさまざまな技術・手法を使用することが前提となっていたり(そのことは書いてありませんが)、原発の解体にかかるエネルギーが含まれていなかったり(これも書いてありませんが)、今後数万年にわたるかもしれない放射性廃棄物の保守・管理のために消費されるエネルギーが含まれていなかったりなど、様々な問題があります。

各電源のライフサイクルCO2排出量.GIF

上で書いた一つ目と二つ目が「何故原子力が必要なのか」の理由にはならないとなれば、おのずと三つ目も理由にならなくなります。だって、温暖化対策だったら、使用済み核燃料の再処理や放射性廃棄物の処分などといった後処理だけ(!)で、事故や故障などがなかったとしても最低18兆9100億円もかかる原発よりも、ずっと費用も時間もかからない効率の良い方法がいっぱいあるからです。

以上、国が「原子力は必要」という理由に事実ではない記述や誤解を招く記述があったので、それらに対する僕の見解を書いてみました。もしちょっとでも参考になったとしたらうれしいです。

最後に、意見の提出方法について書きます。というのも、意見の提出方法がびっくりするくらい面倒だからです。
提出方法は、郵送、FAX、電子メールの3種類ですが、いずれの場合も意見公募要項の3ページ目にある意見提出用紙をプリントし、そこに記入しなければならないのです。
郵送やFAXの場合はそれを郵送またはFAXし、電子メールの場合は記入した用紙を添付して送信しなければならない、、つまり、スキャナーで取り込むなどして、再びデジタルデータにしなければなないのです。
どうして一般的な応募フォームにしなかったんだろう?あえて意見を提出しづらいようにしているのか、それとも自分たちの管理のしやすさを優先しているのか、はたまた提出のしやすさになんて考えが及ばなかったのか。。どれだとしても痛いな。。
とにかく、とっても面倒だったので、そんなことやってられっかと思って、電子メールの本文に意見提出用紙の各項目を書いて送っちゃうことにしました。以下に意見提出用紙の内容を転載するので、よかったらコピー&ペーストして、各項目の間隔を調整して使ってください。。

経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課 パブリックコメント担当 宛
「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会報告書(案)」に対する意見
[氏名]
[住所]
[電話番号]
[FAX番号]
[電子メールアドレス]
[ご意見]
・該当箇所(どの部分についての意見か、該当箇所が分かるように明記して下さい。)
・意見内容
・理由(可能であれば、根拠となる出展等を添付又は併記してください。)

意見公募要項
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000011268
原子力立国計画(案)全文
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1030&btnDownload=yes&hdnSeqno=0000011269
この記事へのコメント
みやちん。おこんばんは。

 月川もコンサルのはしくれですがねー、原子力立国のドラフトねー、つっこみどころ満載。
 もう表紙めくったところから、駄目。

 目次は、「何が何ページに書いてあるか」を書くもの。
 項目だけならべたててあるのは、目次とは言わないのだ。

 そして、しょっぱなから大問題なエネルギー需要についての解説。
 稚拙すぎて、お話になりません。

 なぜ、「日本」のエネルギー消費量の見通しは示さず、「その他のアジア」のエネルギー需要の伸び、になってしまうのでしょう。

 答えは、日本のエネルギー消費は伸びないからじゃないでしょうか。

 だって、あと40数年で、現在の東京都と神奈川県の総人口を足したに匹敵する人口が減少しているんですもの。

 そして2100年には、日本の人口は今の3分の1。しかも、これは少子化に歯止めがかかれば、の話。
 「水力だけでよくね?」と思う。

 人口見通しと将来のエネルギー試算についての問い合わせは、今のところ、どこの原子力関係機関にも無視されています。

 所詮、誰かの利権のための原子力立国案であり、危険、高価な原子力に税金つぎこむ必要性は、全然伝わってこないヨミモノでした。

 もちろん質しますよ。何て答えが来るか楽しみです。
Posted by 月彩 at 2006年07月15日 00:50
個人的には、僕らにとって必要があろうとなかろうと、原子力に拠るエネルギー生産は止めにしたらと思ってます。足りなければ、我慢すればよいと思っています。安全性は、まったく担保されていません。何しろ、現在の科学は概ねの制御法しか知らないのです。器の耐震性に至っては、その科学が知っている範囲の安全性すら担保されていません。

さて、意見聴取。彼らはこういうことで事がおこらないことをよく知っています。やったよ、という事実だけが必要なのです。結果については、嘘にならない程度にホラを吹く、彼らの卓越した技術でなんとかなると自信を持っています。国会議員の先生方は、智慧と知識という点で、彼らの足下にも及びません。マスコミは記者クラブ精度です。

そんなことより、大多数の国民は、譲歩は出来ても、現在の生活水準、享受している利便性を捨てることはできないでしょう。政府を説得するより、こちらを説得する方がたいへんだと思います。

故に、原子力発電所は、取り返しのつかない事故が起こるまで稼働し続けるのだと思っています。
Posted by at_masaqui at 2006年07月15日 04:33
>つっきー

ホント、あえて読みにくくしてるんじゃないかって思うくらい読みにくいですよね。

日本の人口、国が予想してたよりもずっと早く減少に転じちゃったるから、
今あわてて言い訳を考えてるのかもしれませんね。
適当な落としどころを見つけて各機関に周知するまで返事は返ってこない気がします。

今回は、計画案の第2部第1章の冒頭だけ見て、カラクリやウソがあることを書いたけど
そこの本文も酷いですね。時間があったらもっとちゃんと書きたかったのですが。。

ところで、今回ネット上にはちょうどいい図やグラフなどの出典がなかなか見つからなくて、
だからってそれを元に自分で作るのは面倒だったので(汗)、割愛しちゃいました。
もしいいのがあったら教えていただけるとうれしいです。
Posted by みやちん at 2006年07月15日 12:55
>at_masaquiさん

コメントありがとうございます。
最初のご意見は、まったく同感です。
現状が「いつ事故が起こってもおかしくないのに幸い起こっていない」という状況である、
ということを、原発のトラブルに関するニュースを見聞きするたびに痛感します。

パブリックコメントに関しては、「国民の声を聴きました」という体裁を作るためであることも、
だから、国にとって都合の悪い意見を送ってもほとんど見向きもされないことも承知しています。
それでも僕が意見を送るのは、国民の知らないところでそんな勝手なことをするのは許さない!
という僕の意思を伝えるためです。
このような意見が少なかったら、「まだまだ無理を通せるぞ」と思われてしまうだろうし、
逆に多かったら、「そろそろ無理は通せないな」と思わせることができると、僕は思っています。
それに、正しいと思う主張をし続けることは、理想を実現させるためにはとっても大事なことだと
思います。時間はかかるかもしれませんけどね。

最後のご意見は、僕は逆だと思っています。
原発は経済性・安全性・環境性のどれをとっても数年のうちに台頭してくる新エネルギーには
かなわない。。このことは、実は国自身がよくわかっているのだと思います。
だからこそ原子力立国計画のような、国の主導で原子力事業を強力に推進するための政策が
必要になったのではないかと思います。
僕は、市民が問題について知り、声を挙げることで国を変えてゆくことができると思っています。
温暖化の問題も、資源の問題もそうですが、マスメディアがなかなか伝えない本質的なことを、
僕らのような市民がこのようなメディアで伝え、考えたり動いたりするきっかけを広めることで、
取り返しがつかなくなる前に変えてゆきたいです。
Posted by みやちん at 2006年07月15日 13:02
もう、日本の政府は、殆ど第二次世界大戦末期の日本軍状態ですね。自然エネルギーというものはコストが高いなどといってますが、わたしがここ1年ちょっと見てきた太陽光発電はコストが3分の1になりました。さらに、自然エネルギーは市民が取り組めますし、独占状態になりません。これが企業にとってはよくないことなんでしょうけど・・・。地方にとっては最後に残された資源ですし、そうしたエネルギーに支えられる分散型の社会のほうが中央集権的な原子力帝国よりは住みやすいでしょうしね。でも、この国は実に勿体無い事に金を掛けていますね。この不良資産化する核エネルギーシステムが未来を支える事は無いと思います。若い人たちが怒らないのが不思議です。ま、知らされてませんからね。10年後、20年後、30年後、それが間違いだったという時期にはこの方針を決めた連中は生きては居ないでしょうけど・・・。
Posted by 「太陽光・風力発電トラスト」運営委員、中川です。 at 2006年07月30日 19:43
>「太陽光・風力発電トラスト」運営委員、中川さん

コメントありがとうございます。
この報告書には、「自然エネルギーを安定化する技術が実用化する前に、後戻りできない状態まで進めてしまいたい」という政治的な意図があるように思えてなりません。


>この不良資産化する核エネルギーシステムが未来を支える事は無いと思います。

同感です。
僕は原子力立国計画が間違いだと気づくのには10年もかからないのではないかと思っています。
もちろん、そのためには市民が意思決定や価値判断をするために必要な、本質的な情報をもっともっと広めていかなきゃいけないと思いますが。。
Posted by みやちん at 2006年07月31日 22:11
原子力とは…。

日本にもっともふさわしくないのが明らかでありながら、真正面から取り組む気を無くさせる、憂鬱にさせる分野でもあります。

そんな分野を実に丁寧に、丹念に、そして的確な視点で取り組んでいる事。敬服致します。

噂では電力会社の幹部や若手官僚の中にも「原子力お荷物論」が台頭しつつあるとの事。
故に危機感をもっての強引な計画策定なのでしょうね。

最終的には一般市民が「原子力は必要だ」という洗脳からいかに解き放たれる事が出来るかですね。

Posted by 本牧人 at 2006年09月24日 09:33
>本牧人さん

お返事が遅くなってすみません。
コメント通知メールが来なかったため気づくのが遅れてしまいました。


>そんな分野を実に丁寧に、丹念に、そして的確な視点で取り組んでいる事。敬服致します。

ありがとうございます。
このような情報はもっと広く、もっとわかりやすく伝えていかなければならないと思っていて、その点についてはまだまだ力量が足りないと感じているのですが、もしこの文章を読んで丁寧・丹念というように感じていただけたのであればとてもうれしいです。


>噂では電力会社の幹部や若手官僚の中にも「原子力お荷物論」が台頭しつつあるとの事。
>故に危機感をもっての強引な計画策定なのでしょうね。

同感です。
官僚の中にもっとそのような意見が広がっていってくれたらいいですね。


>最終的には一般市民が「原子力は必要だ」という洗脳からいかに解き放たれる事が出来るかですね。

政府や電力会社の一方的で無責任な誇大広告を鵜呑みにしない人が増えていってくれたらいいですね。
そのためには、メディアに対して批判的に見る能力を身に付ける必要があるのと同時に、ブログのようなメディアを使って、正しい情報を広めてゆく必要があるのだと痛感しています。
僕も微力ながらその一端を担っていきたいです。
Posted by みやちん at 2006年10月05日 19:16
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